はじめに
子どもが学校へ行けなくなると、ご家族も大きな不安を抱えます。
「このまま休ませていてよいのだろうか」
「無理にでも学校へ連れて行ったほうがよいのではないか」
「どのような言葉をかければよいのかわからない」
将来のことを心配するあまり、つい強い言葉をかけてしまうこともあるでしょう。
しかし、不登校の背景にうつ状態や強い不安がある場合、登校を急がせたり、励まそうとして責めるような言葉をかけたりすると、本人をさらに追い詰めてしまうことがあります。
大切なのは、すぐに学校へ戻すことではありません。
まずは、子どもが家庭の中で安心して過ごし、心と身体の力を少しずつ取り戻せるように支えることです。
ここでは、不登校やうつ状態にある子どもに、ご家族ができる5つのサポートをご紹介します。
1.無理に登校させようとしない
学校を休む日が続くと、ご家族は「休み癖がついてしまうのではないか」と心配になるかもしれません。
しかし、心が疲れ切っている子どもにとって、学校は強い不安や緊張を感じる場所になっていることがあります。
その状態で、
「明日こそ行きなさい」
「みんな頑張っているんだから」
「いつまで休んでいるの」
と言われると、子どもは「自分はダメな人間だ」と、さらに自分を責めてしまいます。
まずは、安心して休める状態をつくることが大切です。
休むことは、逃げることではありません。疲れた心を守り、回復するために必要な時間です。
学校へ戻ることを最初の目標にするのではなく、まずは食事や睡眠など、日常生活を少しずつ整えることから考えていきましょう。
2.気持ちを否定せず、受け止める
子どもが「学校に行きたくない」「怖い」「何もしたくない」と話したとき、すぐに解決策を示す必要はありません。
まずは、
「そう感じているんだね」
「つらかったんだね」
「話してくれてありがとう」
と、気持ちを受け止めることが大切です。
「そんなことで休むの?」
「考えすぎじゃない?」
「もっと前向きに考えなさい」
という言葉は、励ましのつもりでも、本人には「自分の苦しさをわかってもらえない」と感じられることがあります。
子どもの話が事実として正しいかどうかを判断する前に、まず「本人はそのように感じている」ということを受け止めてあげてください。
気持ちを否定されずに聞いてもらえることは、子どもにとって大きな安心につながります。
3.小さな変化を認める
心が弱っているときには、朝起きることや着替えること、食事をすることさえ大きな負担になることがあります。
そのため、大人から見れば当たり前に見えることでも、本人にとっては大きな一歩かもしれません。
たとえば、
「今日は朝ごはんを食べられたね」
「少し外の空気を吸えたね」
「自分から話してくれてうれしいよ」
「好きなことができてよかったね」
と、小さな変化を認めてあげましょう。
ただし、何でも大げさに褒める必要はありません。
評価するというよりも、「あなたのことをきちんと見ているよ」という気持ちで伝えることが大切です。
小さな成功体験を積み重ねることで、少しずつ自信や自己肯定感を取り戻していくことができます。
4.話さなくても一緒にいられる安心感をつくる
子どもの気持ちを知りたいと思うあまり、
「何があったの?」
「どうして学校に行けないの?」
「これからどうするつもり?」
と、何度も質問してしまうことがあります。
しかし、本人にも理由がわからなかったり、言葉にする力が残っていなかったりすることがあります。
無理に話をさせようとすると、かえって部屋に閉じこもったり、家族を避けたりすることもあります。
話さなくても、同じ部屋でテレビを見る、一緒に食事をする、好きな飲み物をそっと置いておくなど、静かな関わり方も大切です。
沈黙の時間であっても、「ここにいていい」「話せるようになったら話していい」と感じられることが、子どもの安心につながります。
5.家族だけで抱え込まず、専門家の力を借りる
不登校やうつ状態への対応を、ご家族だけで何とかしようとすると、ご家族自身も疲れ切ってしまいます。
子どもを支えるためには、支える側にも相談できる場所が必要です。
相談先としては、
- 学校の担任や養護教諭
- スクールカウンセラー
- 教育支援センター
- 地域の子ども・家庭相談窓口
- 児童精神科
- 心療内科や精神科
- 民間の心理相談やカウンセリング
などがあります。
子ども本人が相談へ行きたがらない場合には、まずご家族だけで相談してもかまいません。
今の接し方でよいのか、どのような言葉を避けたほうがよいのかを専門家と一緒に整理するだけでも、ご家族の不安が軽くなることがあります。
家族の言葉や接し方が、回復に大きく影響します
うつ症状の改善を妨げる要因の一つが、ご家族や周囲の方の何気ない言葉や接し方です。
励ますつもりでかけた言葉であっても、
「甘えているだけ」
「いつまで休んでいるの」
「もっと頑張らないと」
と責められることで、本人はさらに自信を失い、自分を追い詰めてしまうことがあります。
また、家庭内の人間関係や過去の出来事が、心の不調の一因となっている場合もあります。
そのような状況で、本人の苦しみを否定したり、無理に行動を求めたりすると、安心できる場所がなくなり、回復に時間がかかることがあります。
ひきこもりや不登校、うつについて、ご家族や周囲の方が正しく理解し、焦らせず、責めず、温かく見守ることが大切です。
家族の理解と安心できる関わりは、ご本人の回復を支える大きな力になります。
ご家族自身の心も大切にしてください
子どもが学校へ行けない状態が続くと、ご家族も不安や焦り、疲れを感じます。
「育て方が悪かったのではないか」
「自分の接し方が原因だったのではないか」
と、自分を責めてしまうこともあるでしょう。
しかし、ご家族がすべての責任を背負う必要はありません。
大切なのは、過去の対応を責め続けることではなく、これからどのような関わり方ができるかを考えることです。
ご家族も休息を取り、相談できる人や場所を持ってください。
ご家族の心に少し余裕が生まれることで、子どもにも落ち着いて接しやすくなります。
子どもには回復する力があります
不登校やうつ状態からの回復には、時間がかかることがあります。
少し元気になったと思ったあとに、再び調子を崩すこともあります。
そのような変化を「振り出しに戻った」と考える必要はありません。回復は、一直線に進むものではなく、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進んでいくことがあります。
大切なのは、子どものペースを尊重し、
「今のあなたのままで大丈夫」
「焦らなくていいよ」
「困ったときは一緒に考えよう」
と伝え続けることです。
家族の温かいまなざしは、子どもにとって大きな安心材料になります。
おわりに
不登校の子どもに必要なのは、すぐに学校へ戻るよう求められることではありません。
まずは、安心して休み、心と身体の力を取り戻せる環境が必要です。
焦らせないこと、責めないこと、気持ちを否定しないこと。
そして、ご家族だけで抱え込まず、必要に応じて専門家の力を借りること。
子どもが自分のペースで回復していけるように、できることから少しずつ始めていきましょう。

